どくぜり

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一名オホゼリといひ漢名は芹葉鉤吻とかき、濕氣のある處か、浅い水のあるところに生える草で、よく水田其の他の濕地にあるセリによく似た草だがオホゼリといはれる位ですから形は全體に大きく高さが三四尺以上になる草です。地下に中が空洞で竹の様に節のある莖をもつてゐる、それから年々新しい莖を出します。葉はセリの葉によく似てゐますが、形はずっと大きいものです。よく東京市中などの夜店商人が延命竹などといつて緑色をした竹の様な形をしたものを水盤の中に入れて賣つてゐるのを見受けることがありましょう、何も知らない人はほんたうの竹だらう、實に不思議な竹だ、節の二三節も切り取つて水盤の中へ入れておけば生々として後には根が出たり葉が出たりするとは實延命竹の名にそむかないものだ、コリヤ一つ買つて行かうと買つてかへる人がありますが、これは竹ではなくこのオホゼリの根です。そしてこの根には非常に激烈な毒をもつてゐるのですから、そのつもりで取り扱はなければなりません。そんなこともありますまいが、これは竹の類だから、そして見たところは柔らかそうだから喰べられやしないかなどと喰ひいぢのはったものであつて口にしようものならデキに中毒して腹痛、下痢、嘔吐等の中毒症を起すことがあります。それ迄でなくても子供の玩具にでもして、がんぜなく口にくわえるなどのことがあつても大へんですから注意しなければなりません。さて夜店で買つて来た延命竹は大事そうに床の間に飾られた花壇におかれたりして、やがては立派な竹の葉が出て来ることだらうと楽しんでゐる内に、豈計らんやだんだん出て来る葉は竹の葉には似ても似つかぬ柔らかい葉で、擴がるに従つてセリの葉の様になります。オヤオヤといつてゐる内に都合よく勢のあるものにブツカツた場合は葉の間から花の咲く莖が出まして愈々花がさきます。ところが、その花もやはりセリの花の様な白い小さな花が澤山に咲き全く竹類でないといふことが何も知らない方にまでハッキリ分りますと、ナーンダ竹ではないのかと言ひ出す滑稽があります。これはチヨツトその根が竹の様な様子をしてゐることから一種の縁日商人が思ひ付いた事なのです。然し前にも言つた様の激毒を含んでゐるものですから買ふにも、手入れをするにも注意しなけらばなりません。

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